旅立ちはいつも成田から

日々のこと、今までの旅、これからの旅。

2015年10月

8時だヨ!全員集合

秋も深まってきました。
芸術の秋ではないけれど、この時期は何か舞台でも観に行きたくなります。
以前は仕事柄、いろいろなアーティストのライブに足を運んでいました。
そう言えば、一番最初に観た舞台はなんだっただろう・・
確か、小学1、2年の頃に家族で観に行った劇団四季が演じていた
「走れメロス」だったと記憶しています。
しかし僕は途中から寝てしまったそうで、どんな舞台だったか正直憶えていないのです。

そしてその後。
少年の心をそれはそれは陶酔させる舞台を観ることになりました。
ザ・ドリフターズ。「8時だヨ!全員集合」。

全盛期には40〜50%の視聴率を叩き出していたという、
バラエティ番組史に燦然と輝くお化け番組です。

今は千葉県船橋市の「ららぽーと」になっていますが、
子供の頃ららぽーとができる以前は「船橋ヘルスセンター」という、
温泉やら巨大プールがある一大レジャー施設でした。
当時そこにある大劇場で公開生放送を行っていたのです。

仲の良かったクラスの友達が観覧希望のハガキを出したところ、
何と当選したと言うではないか。
一緒に行こうと誘われた時、僕は狂喜乱舞しました。
それからというもの、当日がもう待ち遠しくて待ち遠しくてたまらない。
学校に行ったって授業なんざうわの空で、
もう頭の中はドリフのコント一色に染まっていました。

待ちに待った当日。
友達のお父さんが連れて行ってくれることになり、
僕は何故かおめかしをさせらせ、菓子折りを持たされ、
母から「お父様にちゃんとご挨拶するのよ」と念を押され、
いそいそと出かけました。

テレビで観る番組は夜8時からなのですが、実際には1時間以上前に会場入りし、
新人アイドルやアパッチ、トライアングルという
当時レギュラーで出演していたアイドルグループの前座がありました。
前座と言っても当時は売れていたグループであったし、
生のビッグバンドに合わせて歌うのだから、とても迫力がありました。

7時59分。
突然会場の照明が落とされます。
前説の人が言いました。
「思いっきり声を出してくださいね」

5秒前
3・2・1

長さんが
「8時だヨ!」

「全員集合〜!!!!」

それはまるで地鳴りのようだった。
思いっきり声を出しながら、身体中がカーッと熱くなった。
興奮で気を失いそうだった。
何なんだこれは。すごすぎる。

ビッグバンドはさらに音高らかにオープニングテーマを奏でる。
この音圧。この迫力を何に例えたらいいのか。

エンヤー コーラヤット
ドッコイジャンジャン コーラヤット
ハア〜 ドリフ見たさに (ハア どうしたどうした)
チャンネル こりゃ まわしたら (ハア それからどうした)
今日もな〜
今日も逢えたよ コーリャ
ソレサナアー 5人の色男
(北海盆唄の節で)

ビッグバンドは岡本章生とゲイスターズ。

長さんの
「オイッス!」
またまた地鳴りのような迫力で声が返される。
「オイーッス!!!」

「おっ元気がいいな。もういっちょ オイッス!」

そんな長さんとの掛け合いが嬉しくてたまらなかった。
僕なんか今でも友人と会うとオイッス!なんて言ってしまうことがあるけれど、
間違いなくドリフの影響です。
昭和な人間なのです。

この日のコントは探検シリーズ。砂漠を旅するアリババのコントでした。
少年少女合唱団、ヒゲダンス、仲本工事の体操コーナー。
夢のような時間が瞬く間に過ぎていきました。
終演後は興奮で火照った身体をフワフワさせながら帰途に着いたことを憶えています。

まあそれにしても、こんな番組今では絶対に放映できないでしょう。
もし仮に放映したら、それこそ自称品行方正な方々から鬼のようなクレームが
届くのでしょう。
やれ下品だとか、やれ下ネタはいけませんとか。
当時でさえ、PTAの奥様方から子供に観せてはいけない番組の筆頭に挙がっていたのです。
因みに観せてはいけない番組のもう一つは伊東四朗や小松政夫が出演していた、
「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」でした。
こちらもまたドリフ以上に奥様方の評判が悪いものでした。
今では想像もつかないでしょうが、女装したお母さん役の伊東四朗のめちゃくちゃぶりに、
腹を抱えて笑ったものでした。

若い世代の人にとっては、いかりや長介や伊東四朗は
味のある大御所俳優という認識なのかもしれません。
もちろんそれも正解なのですが、僕らの世代にとっては、
あの頃お茶の間に爆笑を届けてくれた大変に偉大なコメディアンなのです。
(そしてドリフターズは偉大なミュージシャンです。)

クラスではやはり家で番組を観ることを禁止されている友人もいましたが、
我が家では別段禁止されることはなかったのです。
それでもいつか禁止されるのではないかと内心思いながら番組を観ていたので、
ある日、気になった僕は母に訊いてみました。
「どうしてうちは観てはダメって言わないの?」
すると母は、
「あなたが生まれる前にお父さんとデートでよくドリフを観に行っていたのよ」。

そうだったのか!
もっともその頃はもっと音楽的な要素が強かったそうですが、
それから僕は安心してドリフを観るようになったのです。
当日僕が出かける時、心なしか母も行きたそうな顔をしていた理由がわかりました。
そして子供ながらに、どこか深いところで両親を信頼するようになりました。

今、テレビのバラエティ番組がつまらないと言われます。
そりゃあそうでしょう。
何かと言えば見苦しいだの差別だなんだと言って、表現を規制して
当たり障りのないことばかりやっているのですから。

子供は鋭い。
大人が「子供はこんなものでしょ」的に作ったものには見向きもしません。
テレビ番組も絵本もおもちゃも結局は大人も納得するような本物でないと
受け入れられません。
子供はうんこもおしっこもおならもエッチなことも大好きです。
そういうことをきちんと描いた絵本はあるのに、テレビはないですね。
そもそも人間は滑稽だし、差別はするし、
利益を取ってお金を稼がなきゃ食っていけないし。
臭いものには蓋をして、きれいごとばかり言ったところで
子供はとっくに見抜いているはずなのに。
子供たちがこれから学校や社会で体験するであろう、矛盾ややるせなささえも、
ドリフはコントというフィルターを通して体現していたのではないかと思います。

本当に贅沢な番組だったと思います。
綿密な計算の上に成り立ったコント。音楽は全て生のビッグバンド。
舞台上での阿吽の呼吸が子供にだって間違いなく伝わります。
「8時だヨ!全員集合」になぜ日本中の子供たちが、いや大人だって夢中になり、
親の目を盗んでまでテレビを観ようとしたのか。
それは、全てが本物だったからだと思います。

最近はテレビでバラエティ番組をあまり観なくなってしまいました。
深夜にひっそりとやっていた、志村けんが出ている
「志村家です」?(タイトルがちょくちょく変わります) が好きで
楽しみに観ていたのですが、沖縄では放映していないようです。
東京ローカルなのでしょうか。

「俺たちひょうきん族」で「8時だヨ!全員集合」に引導を渡すことになったテレビ局は
いま視聴率の低迷に苦しんでいるといいます。
ならばいっそのこと、視聴者からのクレームは一切受け付けません、と宣言し
思いっきりバカ笑いができる番組を作ってみたらいいと思うのですが。
そうするとスポンサーが付かないのでしょうか。

難しい世の中になりました。
せめて自分は臭いものには蓋をせず、きれいごとばかりを言わないように
生きていこうと思います。
まあお利口さんぶったところで、すぐにボロが出ますけれども。

僕はコメディーが大好きです。
笑いも突き抜けると人間の哀愁さえも感じさせてしまう。
そんな奥の深いものだと思っています。


風太




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映画『グッド・ストライプス』

最近観た、映画『グッド・ストライプス』。
これがとても良かったのです。

僕は特に熱心な映画ファンではないので、
これを観たい!と決めて映画館に足を運ぶことはあまりありません。
ふらっと映画館に行って、なんか良さそうだなぁ・・
と思った映画を観るのが好きなのです。

現にこの作品もなんの予備知識もなく、
大変失礼ながらスクリーンの中で分かったキャストも、
うじきつよしさんと杏子さんだけでした。(すみません)
バービーボーイズや子供ばんどをリアルに聴いてきた世代なのです。


交際して4年が経ちマンネリに陥っている、
田舎から上京してきたちょっとマニアックな音楽好きのサブカル系女子の緑と
都会育ちでぼんぼん、イケメンの真生。
ともに28歳。
お互いすれ違いが多く、別れるのかなと思っていたところに緑の妊娠発覚。
そして、めでたく結婚しました。
おしまい。

ストーリーを簡単に言ってしまえばこれだけです。
もしかしたら世間的にはよくある話なのかもしれません。
平凡な人生。特別ではない普通の人生。

しかし。
結婚する予定もなく、子供をつくる予定もないゲイである僕にとっては、
世間で言うところの平凡な人生、普通の人生というものが、
とてつもなく特別な、劇的な人生に思えるのです。

真生と緑二人で、緑の田舎の実家に挨拶に行くシーンがあります。

もう昔の話ですが、妹の彼氏がお酒と菓子折りを持って
実家に挨拶に来たことを思い出してしまいました。

父と妹と彼氏が家の和室に入って行きました。
母と僕は襖のこちら側で料理を持っていくタイミングを見計らっていました。
こちらとしては、決めの台詞があってリラックスしたところで、
さあ料理でも、といきたい。
彼氏はなかなか言えないようだった。
母は、お互い無口だからねえ、なんて笑っていたけれど僕は気が気ではなかった。
このまま言えなかったら、結婚は無しになってしまうのか。
この料理はどうすればいいのだろう。どうでもいいことまで考えてしまう。
無事セリフも決まったようで、襖から妹が顔を出した時は、
母と顔を見合わせ、ほっとため息をついてしまった。

世間はみんながやっていることと言うけれど、本当に凄いことです。
武道館で一万人を前に歌うことよりも大変なことだと僕には思えます。
正直、その時自分はゲイで良かったとさえ思ったことを覚えています。

映画のシーンでは緑の姉が一見ぶっきらぼうな雰囲気を出しながらも、
真生の緊張を包み込むようにその場を上手く収めていきます。

姉は真生に緑の過去を暴露します。
金髪、唇にピアス、とんがっていた頃の緑。

姉は真生を信頼したからこそ、緑の過去を暴露したのだと思います。
案の定、緑と姉は取っ組み合いの大げんかになりますが、
真生と緑が二人になった時、真生が緑に、
「お姉さんはいい人だ」、と言うところがこの映画の大好きなシーンです。
このシーンで、二人は上手くいくと確信しました。
そして、間違いなくケンカをすることになるだろうけれど、
こんな姉ちゃんがいたらいいな、とも思いました。

映画の中では、無意識のうちに真生に自分を重ね合わせて観ていました。
もちろん、あんなイケメンでもボンボンでもありませんが、
良くも悪くも若い頃の自分を見ているような気がしてならなかったです。
妹にも、長く付き合った彼氏にも「過保護に育てられた」とよく言われ、
今でもそれはコンプレックスでもあります。

旅をするように沖縄に住み、今だに好き勝手な人生を歩んでいます。
仕事だけは真面目にやってきたけれど、
「誰かのために生きる」、ということをしていないのは、
世間的に見れば、きっと「イタい」人間なのではないか。
その言い訳をするために、カミングアウトなどをし始めたのではないか。

そんなことを考えている時に、この映画に出会いました。

悪い頭を振り絞って考えてみました。
それでもやっぱり、
何があってもその人が生きてきた人生に間違いなんてないと思いました。
みんな正解です。
そう断言したいと思います。


「グッド・ストライプス」。
特別ではない普通の人生だけれど、そんな毎日から生まれる人間の感情の揺れ動きが
とても丁寧に描かれていて、心を揺さぶられました。
人にはそれぞれの人生があって、それらをちゃんと肯定してくれている。

それがこの作品を大好きになった一番の理由です。


この映画と出会えたことに感謝します。



風太






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Real property leasing 。沖縄県那覇市へ移住。旅が好きで約30カ国を訪問。トルコ、スペイン、モロッコ、ペルー、ブラジル、タイ、ネパールが特に好きになりました。 10年以上前に音楽ライターをやっていましたが、今後はジャンルにとらわれず色々と書いていきたいと思います。よろしくお願い致します。
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