最近観た、映画『グッド・ストライプス』。
これがとても良かったのです。

僕は特に熱心な映画ファンではないので、
これを観たい!と決めて映画館に足を運ぶことはあまりありません。
ふらっと映画館に行って、なんか良さそうだなぁ・・
と思った映画を観るのが好きなのです。

現にこの作品もなんの予備知識もなく、
大変失礼ながらスクリーンの中で分かったキャストも、
うじきつよしさんと杏子さんだけでした。(すみません)
バービーボーイズや子供ばんどをリアルに聴いてきた世代なのです。


交際して4年が経ちマンネリに陥っている、
田舎から上京してきたちょっとマニアックな音楽好きのサブカル系女子の緑と
都会育ちでぼんぼん、イケメンの真生。
ともに28歳。
お互いすれ違いが多く、別れるのかなと思っていたところに緑の妊娠発覚。
そして、めでたく結婚しました。
おしまい。

ストーリーを簡単に言ってしまえばこれだけです。
もしかしたら世間的にはよくある話なのかもしれません。
平凡な人生。特別ではない普通の人生。

しかし。
結婚する予定もなく、子供をつくる予定もないゲイである僕にとっては、
世間で言うところの平凡な人生、普通の人生というものが、
とてつもなく特別な、劇的な人生に思えるのです。

真生と緑二人で、緑の田舎の実家に挨拶に行くシーンがあります。

もう昔の話ですが、妹の彼氏がお酒と菓子折りを持って
実家に挨拶に来たことを思い出してしまいました。

父と妹と彼氏が家の和室に入って行きました。
母と僕は襖のこちら側で料理を持っていくタイミングを見計らっていました。
こちらとしては、決めの台詞があってリラックスしたところで、
さあ料理でも、といきたい。
彼氏はなかなか言えないようだった。
母は、お互い無口だからねえ、なんて笑っていたけれど僕は気が気ではなかった。
このまま言えなかったら、結婚は無しになってしまうのか。
この料理はどうすればいいのだろう。どうでもいいことまで考えてしまう。
無事セリフも決まったようで、襖から妹が顔を出した時は、
母と顔を見合わせ、ほっとため息をついてしまった。

世間はみんながやっていることと言うけれど、本当に凄いことです。
武道館で一万人を前に歌うことよりも大変なことだと僕には思えます。
正直、その時自分はゲイで良かったとさえ思ったことを覚えています。

映画のシーンでは緑の姉が一見ぶっきらぼうな雰囲気を出しながらも、
真生の緊張を包み込むようにその場を上手く収めていきます。

姉は真生に緑の過去を暴露します。
金髪、唇にピアス、とんがっていた頃の緑。

姉は真生を信頼したからこそ、緑の過去を暴露したのだと思います。
案の定、緑と姉は取っ組み合いの大げんかになりますが、
真生と緑が二人になった時、真生が緑に、
「お姉さんはいい人だ」、と言うところがこの映画の大好きなシーンです。
このシーンで、二人は上手くいくと確信しました。
そして、間違いなくケンカをすることになるだろうけれど、
こんな姉ちゃんがいたらいいな、とも思いました。

映画の中では、無意識のうちに真生に自分を重ね合わせて観ていました。
もちろん、あんなイケメンでもボンボンでもありませんが、
良くも悪くも若い頃の自分を見ているような気がしてならなかったです。
妹にも、長く付き合った彼氏にも「過保護に育てられた」とよく言われ、
今でもそれはコンプレックスでもあります。

旅をするように沖縄に住み、今だに好き勝手な人生を歩んでいます。
仕事だけは真面目にやってきたけれど、
「誰かのために生きる」、ということをしていないのは、
世間的に見れば、きっと「イタい」人間なのではないか。
その言い訳をするために、カミングアウトなどをし始めたのではないか。

そんなことを考えている時に、この映画に出会いました。

悪い頭を振り絞って考えてみました。
それでもやっぱり、
何があってもその人が生きてきた人生に間違いなんてないと思いました。
みんな正解です。
そう断言したいと思います。


「グッド・ストライプス」。
特別ではない普通の人生だけれど、そんな毎日から生まれる人間の感情の揺れ動きが
とても丁寧に描かれていて、心を揺さぶられました。
人にはそれぞれの人生があって、それらをちゃんと肯定してくれている。

それがこの作品を大好きになった一番の理由です。


この映画と出会えたことに感謝します。



風太






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