インドの旅の続きを書こうと思ったのですが、
今日、月曜日は一日中、台風で外は大荒れでしたので、
台風の思い出を書こうと思いました。

月曜日は荒れ模様。STORMY MONDAY。
ブルースのスタンダードです。

しかし、YouTubeって本当にすごいですね。
僕は、ルー・ロウルズが歌うSTORMY MONDAY が聴きたかった。
この曲にあっては、ルー・ロウルズのバージョンは上がっていないだろうな・・・

ところが。
まさに、見たかった映像そのものが出てきた。

1989年8月26日 土曜日 山中湖畔で行われた、
Mt.Fuji jazz festival 「Low Rawls SHOW」。

YouTube恐るべし。

当時、8月の最終週末に行われていた、過ぎゆく夏を彩るJAZZの祭典、
マウントフジ・ジャズフェスティバル。
大学時代の夏は、このフェスティバルでアルバイトをするのが恒例になっていました。
アルバイトですから、もちろん仕事である訳ですが、
参加している学生も、みな気のいい連中ばかりで、
まるで合宿のような楽しさがありました。
当時、五反田にあった楽器店でアルバイトの紹介をしてもらった記憶があります。
26年前のこの会場にまだ10代、若かりし頃の自分がいます。

当日は入り口でチケットをもぎったり、舞台裏の楽屋にコーヒーを運んだり。
楽屋には、アート・ブレイキー、ロン・カーター、
ハービー・ハンコック、チック・コリア・・・・
錚々たるJAZZの巨人たちがいて、夢のような世界が広がっていました。
ひとたび舞台に立てば超人的な技が炸裂するわけですが、
JAZZの巨人たちはみな陽気で、司会の山口美江さんもこれまた陽気で、
このフェスティバルを心から楽しんでいる様子が伝わってきました。

エントランス、バックヤード、休憩。
仕事はこのローテーションでまわり、休憩時間は客席で自由にライブを見ることができます。
とは言っても、エントランスは開演前の入場時こそ忙しいですが、
演奏が始まってしまえば、それほど忙しくはありません。
バックヤードはミュージシャンの側にいられるので嬉しい。
音はどこにいても聴こえてきます。結局はどこにいても楽しかったのです。

僕はテナーサックスのスタンリー・タレンタインが大好きでした。
それでも休憩とこのステージが重なったことは、じっくりと音が聴けるので、
またとない嬉しい気分で観戦しました。

ミドルテンポのいい感じのリズムに乗って、ロウルズが歌い始めます。
STORMY MONDAY でした。
よく聴くSTORMY MONDAY よりもテンポが速く、とても新鮮です。
ロウルズの渋い声が発せられた瞬間、会場の空気が変わったのが瞬間で分かりました。
乗りやすいテンポ、オーソドックスなブルーズのコード進行、
グルーヴィーな演奏が観客を煽ります。
スタンリー・タレンタインのこれぞテナー!と言わんばかりの
ファンキーなブロウには痺れました。
舞台袖では、前日にまるで火を吹くような熱い演奏を見せた、
サックスのジョージ・アダムス、ピアノのドン・プーレンの
楽しそうな姿も映し出されています。

この映像を見て正直、目頭が熱くなりました。


みんなノリノリで宿泊所に戻り、夜食を済ませ部屋でトランプをしていると、
「バーーン!」
思わず飛び上がるほどの雷が鳴り、雨と風が時間を追うごとに強烈になってきました。
・・・
明日って大丈夫なのか?
いや、どうだか。

夜半からの強い風雨。
翌日はもう大嵐で、ライブどころの話ではありませんでした。
馬鹿な僕らは、
会場を見に行ってみようぜ!ということになり、
風雨に打たれながら実際に行ってみると、
まるで山中湖と同化してしまったように会場一面が湖のようになり、
仮設トイレがプカプカと浮いているような状態でした。

僕らは一日中、宿泊所で待機となり、その後大渋滞の中央高速を走り、
新宿に着いたのはもう夜も遅くなってからでしたが、
無事生還の祝杯を挙げたのでした。

・・・

台風の嵐の日、8月27日の日曜日に出演予定だったアーティストはホテルの中で
テレビ放送用の収録を行っていました。
後日、テレビで放映を見ると、
この日の出演のアーティストの誰だったか、

「ルー、お前さんが前日に、STORMY MONDAY なんか歌うからだよ!」

と笑いながらジョークを飛ばしていたと、MCの山口美江さんが話していました。
日曜日だけど、STORMY MONDAY。


アート・ブレイキー、スタンリー・タレンタイン、ジョージ・アダムス、
ドン・プーレン、若くして山口美江さん、そして、ルー・ロウルズ。
みんな天国へ旅立ってしまいました。

僕らはJAZZの巨人たちの熱い演奏を見届けることができた、最後の世代なのかも知れません。
たった一瞬でもあの熱いグルーヴと同じ空間にいられたこと、同じ空気を吸えたこと、
26年経った今でも、心の中で生きつづけています。


きっと今頃は天国で陽気にJAMっているんだろうな・・

じゃあ次は、STORMY MONDAY・・



風太




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